細胞へのエネルギー供給方法

 「生命進化8つの謎」から。

 細胞は化学エンジンなのであり、エンジンにはエネルギー供給が必要なのだ。
 こんにちの細胞は、次の三つの方法のどれかでエネルギーを得ている。

  1. 光合成
    • 原核生物である藍色細菌(青緑細菌、藍藻)や、真核生物である藻類および高等植物は、どちらもエネルギーを日光から得ている。彼らは日光のエネルギーをとらえ、これを使ってエネルギーに富んだ有機分子、特に糖を合成する。これらの化合物は、その後細胞の代謝の残りの部分を駆動する燃料として使われる。
  2. 従属栄養
    • 動物や菌類、また光合成しない細胞は一般に、食物としてエネルギーに富んだ化合物を取り込む。そうした化合物の起源は結局最後は光合成からきている。動物は植物を食べ、あるいは植物を食べる動物を食べる。菌類や多くの細菌は、分解しつつある動植物に頼って生きている(従属栄養は他栄養または他家栄養とも呼ばれ、英語では heterotrophy で、この hetero はエネルギー源を他の生物に依存することを意味している)。
  3. 独立栄養
    • 細菌のうちには、自分の有機物質を、炭素原子を一個しか持たない二酸化炭素のようなものから全部合成するものがある。この合成のエネルギー源は日光から(光合成)、あるいは無機物から得ている。たとえば深海の熱水噴出口の生態系は、最終のエネルギー源を光合成ではなしに、おもにこの反応に頼っている(独立栄養は自栄養または自家栄養とも呼ばれ、英語では autotrophy で、この auto は「自前」の意味)。

 最初の生物は、どうだっただろうか。明らかに光合成は答えになりそうもない。光合成には、複雑で高度に進化したタンパク質が必要だからだ。定義からして、最初の生物は自養性でなくてはならなかった。他の生物に頼ってエネルギーを得ることはできなかったのだ(「最初の」生物にとって「他の」生物は存在しないから)。しかし原初の大洋は、スタンリー・ミラーの実験で合成されたような、生物なしで合成された有機物に富んでいたかもしれない。これらの化合物合成のエネルギー源は太陽光線だった。その生成効率、すなわち太陽光線中のエネルギーのうち、形成された化合物に取り込まれた比率が、光合成での効率に比べてきわめて低かったにしても、この点は問題ではなかっただろう。問題は、このエネルギー供給がどうやって最初の細胞に入ったのかという点にある。糖は、特別なタンパク質性のポンプの助けがなければ、脂質二重層を透過しない。最初の細胞内でのエネルギーの源は自養性ということになりそうである。

 1.の光合成と2.の従属栄養は、持続可能な循環社会の中によく出てくる。しかし、最初の細胞が、3.の独立栄養であったのならば、植物からエネルギーを得るよりも簡単にエネルギーを取り込むことができるのではないだろうか。ただし、エネルギーの効率といった面では、効率がかなり低い気もする。