集中大量生産から分散適量生産へ(2)

引き続き、超臨界流体技術と分散型製造プロセスの構築から。

 持続可能な社会において、このような分散適量生産が製品に応じた適正規模で、各地域で行われ、それぞれの地域で必要な量を地域内の物資の循環と自然エネルギーの流れを用いて自給自足される。ここでの自給自足社会は民族とか国とかの社会単位で一義的に決まる物ではなく、分散適量生産技術に応じて決まる最適な物質循環が成立しうる地域での自給自足であり、製品によりその地域単位が異なる自給自足社会である。そのイメージは、最適な物質循環がA製品は家庭単位で、B製品は県単位で、C製品は地方単位で、D製品は国単位で、E製品は世界規模で行われているような社会システムである。このような自給自足システムが製品及び地域の特色に応じて地球全体に分散して存在し、各地域は水圏と大気圏を共有し、それ以外の物質は原則的には最適循環可能な境界で閉じられたものとなる。未来社会においては物質のボーダレス化は終焉し、太陽由来の再生可能なエネルギーを使用し、食糧を含めたあらゆる製品について自立した物質循環システムが適切な分散適量生産技術に支えられて作動している。すなわち、現在の自由経済とは全く異なり、多くのエネルギーを消費する物資の大量貿易、大量輸送が不用となり、科学技術を駆使した自給自足の経済社会、生産と需要が密接に結びついた持続可能な社会が成立する。

 ここで述べられている自給自足の経済社会を実現するには、まずは、売上主義から利益主義に完全に移行することが必要だろう。今のように合併することで、企業を大きくしていくアメリカ的弱肉強食社会からの脱皮が必要だと思う。そのためには、一定の利益を安定して企業が確保し、自給自足の経済社会を実現するための技術開発に投資していく必要がある。
 企業理念には、社会への貢献が最優先されるべきで、それを評価するシステムが必要となる。また、特許や著作権などの権利に関して見直しも行う必要があると思う。ものの価値が自由経済社会のように世界で競争される社会とは異なる自給自足の経済社会では、権利を保護するよりも、ジェネラル薬品のように、積極的に共有できる環境が必須だと思う。石油を広く薄く産出する時期が来る前までに、変革を行うためには、こうした制度の是正も必要になってくると思う。