太陽エネルギーは化石資源に代わり得るのか

 引き続き、超臨界流体技術と分散型製造プロセスの構築から。

 「太陽エネルギーは化石資源に代わり得るのか」−この質問は、太陽エネルギーの全面的利用に際して、殆ど否定的な意味で使われているが、極めて愚問である。先に述べたように太陽エネルギーに換えなければ持続可能な社会の実現はあり得ないからである。換えられないとしたならば、破綻を何時まで先延ばしできるかであり、究極のエネルギーと言われる核融合が実用化されても同じことである。多分、核融合の原料である重水素の枯渇の前に、閉鎖系の地球内での膨大な集中的排熱による環境破壊や高エネルギー放射線の問題等未知の環境問題が出現する可能性は否定できない。
 これに対して、巨大な核融合炉である太陽から膨大なエネルギーがこの地表に遍く降り注いでおり、地表で受けるその量は石油換算にして1日2,000億トン、現在の世界エネルギー全消費量の10,000倍にも達する。前述した光合成反応による年間の炭素循環量、950億トンは、現在の化石資源消費量65億トンの10倍以上であり、膨大な有機物がバイオマスとして合成されている。生態系に負の影響を与えないで人間がエネルギーとして利用できるバイオマスの量、すなわち持続可能収量を正確に把握することは今後の重要課題であるが、仮に循環量の10%をバイパスとして利用できるとすれば現在の化石資源消費量を十分上回ることになる。さらに、将来の定常人口を最大100億人とし、世界中の人々が日本人並みのエネルギーを消費したとしても、全消費エネルギーは地表が受ける太陽エネルギーの僅か0.05%に過ぎない。すなわち、現在の日本人の生活が豊かであるかどうかは別として、バイオマスのみならず、太陽光発電、風力や水力等持続可能な太陽エネルギーの総合的利用により、現在のエネルギー消費量の数倍のエネルギー供給は原理的に十分可能である。

 この部分は、原理的には可能かも知れないが、越えなければならないハードルがたくさんある。太陽電池の場合、変換効率が10〜20%とまだ低い。日本では、風力発電などを設置できる場所が限られている(それほど風が強い風土ではない)。水力発電にしても課題は多いらしい。技術的に解決していかなければならない問題が多いと思う。
 課題が多いのは、技術面ばかりではない。化石燃料に依存しきっている今の社会そのものを変えていかなければならない。市場主義経済化では、この課題を克服するのは困難だと思う。
 専門家ではないので、間違っているかも知れないが、資本主義経済には循環社会という定義がないと思う。右肩上がりの経済成長しか想定されていないので、そこにループは存在しない。今、会社にこのことの重要性を提案したとしても、判断材料が無いのが実情だと思う。また、国単位で行っても、他国との経済競争が問題になり頓挫する可能性が高い。やはりEUのような共和制連合を作って、そこが、問題解決方向を示して実現させるしか方法は無いように思える。ただの経済共同体ではなく、環境問題を真剣に議論し合い、その方向性を決められる共同体を築くことは急務だし、日本が率先して行わなければならない内容だと思う。