風が吹けば桶屋が儲かるのか?

藤原正彦著「国家の品格」から

 「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺がありますが、この場合はどうでしょうか。風が吹けば埃が立つ。埃が立つと目を患う人が多くなる。すると目が見えない人が多くなる。目が見えなくなった人の中から三味線弾きが出る。三味線弾きが多くなると三味線の需要が増える。三味線の皮は猫のものなので猫の需要が増える。町から猫が少なくなる。するとネズミが増える。増えたネズミは風呂桶をかじる。だから桶屋が儲かる・・・・。ちゃんとした理論です。
 しかし数学的に考えてみるとどうでしょうか。風が吹くと埃が舞い上がる。これが90%正しい、すなわち0.9とする。ところが次に、埃が目に入って目を患う確率は10%、すなわち0.1くらい。その中から目が見えなくなる人となると、0.001ぐらい。その次の三味線弾きになるとまた0.001。各ステップを全部かけていくと、おそらく確率は一兆分の一以下になるでしょう。要するに現実には風が吹いても桶屋は儲からない。
 このように一般の世の中では、長い理論というのは非常に危険なのです。全てのステップは灰色だから、小数のかけ算を何度もすることとなり、信憑性はどんどん下がっていきます。

 この本、ベストセラーになっているが、問題定義とその解決手法に関しては一部共感できるが、話の持って行き方が極端で雑な気がする。本全体については、別途考察することにして、今回は、本の中にあった確率を使用した理論の見方が面白かったので紹介した。自分の論理展開を検証するときに使用できるテクニックだと思う。