超読解力 三上直之著

「超」読解力 (講談社+α新書)

第1章 文字情報「強迫」社会を生き抜く為の読解力
第2章 読解力の磨き方
第3章 三つの方法を見抜いて読解力アップ
第4章 読解力をさらに鍛える技術
第5章 要約は最良の読解力テスト
第6章 文章の背景知識を学べば読解力は格段と高まる
第7章 読解力は書く力にもなる

 非常に分かりやすい文体で書かれた読解力の教科書。著者の三上氏はまえがきでこの本の必要性を次のように書いている。

 私たち現代人は、日々、読むことに追われ、つねに何かを読み続ける必要に迫られながら生きている。近年では、これにインターネットや携帯電話の普及が拍車をかけている。
 こうして読むことに追われる生活を送っていると、ときどき、読んでいる内容がさっぱり頭に入ってこなくなることがある。
 しかし、新聞や雑誌の論説・評論、あるいは教養書などにおいて難解な文章に出くわした場合に使える「大人の教科書」はない、というのが現状。
 この「超読解力」を、大学生や社会人が頼れる現代国語の教科書として活用してほしい。

 この引用は、本書に書いてある「文章の要約方法」に沿って要約した。もうだいぶ昔のことなので、曖昧な記憶なのだが、学校で要約の仕方を習った記憶はない。三上氏が書いているように、ルールに従って、要約を行うと非常にすっきりした要約ができる。

要約の手順
(一)各段落を要約する

  • 各段落の説明文を捨てて、主題文のみを残す。

(二)各段落の要約(主題文)を前から順に組み合わせる

  • 順番を前後させる必要はない。

(三)規定の字数に収まるように調節する

 「読解力は、大きく分けて三つの部分から成り立っている。」と三上氏は言う。

第一は、語彙や文法など日本語についての一般的知識。
第二は、文章を構造的に理解するための論理的思考力。
第三は、文章の内容についての背景知識。

 本書は、第二の論理的思考力に重きをおいて書かれている。第三の背景知識について、三上氏はこう述べている。

「読解力」が問題になる場面で問われている背景知識は、「近代」というものに対する理解につきる。「近代」とは、科学とテクノロジーが飛躍的に発展し、個人主義や民主主義の思想が開花し、それと同時に、資本主義・産業主義が世界を覆い尽くすに至った時代のこと。

 背景知識については、第六章で具体例を挙げてその必要性を語っている。
 文章について、

どんな文章にも必ず言いたいことがある。文章が長くなって本一冊分になっても、やはり言いたいことは、基本的に一つと考えた方がよい。主題文以外はすべて説明文。

  • 主題文=文章の中で「言いたいこと」を直接表現している部分
  • 説明文=主題文以外の部分(具体例や補足説明など、主題文を分かりやすく説明する部分)

 当たり前のことなのだが、この本を読んで、普段、これを意識して文章を読んでいないことに改めて気づいた。

文章を読むという行為は、書き手の「言いたいこと」を理解すること。

 というのも、普段意識していない。「文章とは?」「文章を読むとは?」といった原点に十年に一度でいいから立ち返って、雑になっている読書の仕方を修正するのも必要なことだと思う。
もっとも、三上氏は、日々意識することを進めているが・・・

文章を書く人が、私たち読者を説得するためにどんなテクニックを使うのか、その一般的なメニューを知っておけば、文章をスムーズに読むうえで、大きな手がかりとなる。

 そして、そのメニューは、

論理展開の基本三パターン

  • 対立 欧米と日本、過去と現在を対比するなど、二つの対象を比較・対照させる方法
  • 並立 「第一に・・・・・、第二に・・・・・、第三に・・・・・」要件を列挙する方法
  • 同内容 同じ内容を、表現を変えながら繰り返し説明・主張する方法

 対立、並立、同内容の三パターンを常に意識しながら文章を読むことが大切と言っている。そして、読み進めるうえで目印になる接続語があり、それぞれ、

読解力テクニック①対立を見極める

  • 対立の目印 しかし、ところが、だが、一方で、他方で、対照的に、反対に、〜に対して、逆になど

読解力テクニック②並立を見極める

  • 並立の目印 〜も、〜や・・・・、第一に・第二に・第三に・・・、まず・次に・最後に、最初に・さらに、など

読解力テクニック③同内容を見極める

  • 同内容の目印 つまり、要するに、いわば、換言すると、言い換えると、すなわち、例えば、〜のようになど

 また、文章はこの三パターンの組み合わせで出来ており、それを見極めることがポイントだと述べている。

読解力テクニック④三方法の組み合わせを見極める

  • 三つの論理展開の方法は、さまざまなレベルで組み合わされて使われる。

 そして、接続語に注目するとより文章を理解しやすくなる。

読解力テクニック⑤接続語を見極める

  • 接続語とは、文と文、または語句と語句を結びつけ、相互の論理的関係を明らかにする語句。
  • 接続語をマスターすれば、文章がどういう流れになっているか、的確につかむことができる。

主な接続語とその働き

  • ア。対立系
    • ①逆接(=反対の内容を導く) しかし、けれども、が、だが、ところが、にもかかわらず など
    • ②比較(=前後の内容を比較する)むしろ
    • ③限定(=条件や例外を示す)ただ、ただし、もっとも、なお など
  • イ.並立系
    • ④並立(=前後の内容を対等に述べる)また、かつ、同様に、ならびに、および など
    • ⑤選択(=前後の内容を対等に並べ、そのいずれを選んでもよいことを示す)または、あるいは、もしくは など
  • ウ.同内容系
    • ⑥同格(=前後が同内容であることを示す)つまり、要するに、換言すれば、すなわち、言いかえると など
    • ⑦例示・比喩(=具体例や比喩で説明する)例えば、例を挙げると、いわば など
  • エ.順接系
    • ⑧順接(=前の内容を受けてそのまま後へつなぐ)そして、そこで、そうして、それから など
    • ⑨結果順接(=結果や結論を導く)従って、ゆえに、だから、そこで、それで、それゆえ など
    • ⑩添加(=新たな内容を付け加える)さらに、そのうえ、しかも、のみならず、そのほか など
  • オ.その他
    • ⑪転換(=話題をかえる)さて、ところで、では、そもそも、ときに、いったい など
    • ⑫理由(=前に述べた内容について、理由や根拠を示す)なぜなら、というのは など

 また、

読解力というのは、かなりの部分で、逆接を読み解く力と言っていいかもしれない。

 とも述べている。
 文章でよく津川得るテクニックとして、譲歩というものがある。

読解力テクニック⑥譲歩を見極める
自分の意見を主張する前に、まずはその反対の主張や常識的な意見を紹介するという手がよく使われる。これを譲歩という。

譲歩の論理展開
譲歩の副詞+(予想される反対意見や常識的な見解、多数意見など)+逆接の接続語+(筆者の主張)

  • 譲歩の副詞=たしかに、もちろん、なるほど など
  • 逆接の接続語=しかし、けれども、が、だが、ところが、にもかかわらず など

このほか、

読解力テクニック⑦キーワードの定義を見極める
言葉の定義をつかむことは、読む力の大切な要素である。キーワードとは、その名のとおり本文の鍵となる重要な言葉。キーワードが一般的な意味とは違う意味で使われているような場合、勝手な思いこみや常識的な判断で読み進めていってしまうと、話が理解できなくなる場合がある。
自分の先入観や思いこみを排除して正確に読むためには、筆者が本文中のキーワードをどのように定義しているか気を配る必要がある。

読解力テクニック⑧理由を見極める
何らかの意見や主張を述べる文章では、主張には必ず理由がともなう。
理由に注目することで、文章を感覚的にではなく、論理的に緻密に理解することができる。

読解力テクニック⑨指示語の内容を見極める

読解力テクニック⑩書き込みの効用を見極める

などが述べられている。
 要約に関しては、

カン頼みのまとめ方では、文章の要点を的確にとらえた要約にはならない。
要約とは、文章の論理展開を見取り図的にまとめたもの。「細かい情報がそぎ落とされている」という点が大事。本当に言いたいこと(主題)だけを抜き出したものが要約となる。

 この見取り図という表現が気に入った。言われて妙である。だまされたと思って、三上氏のいう要約法を実践してみると、なるほど、要約が短時間で出来上がる。
 もう一度、要約手順を書いておくと、

要約の手順
(一)各段落を要約する

  • 各段落の説明文を捨てて、主題文のみを残す。

(二)各段落の要約(主題文)を前から順に組み合わせる

  • 順番を前後させる必要はない。

(三)規定の字数に収まるように調節する

である。