企業や行政に対する市民の不信感

 そうはいっても、企業や行政に対する市民の不信感にはとても根強いものがあります。この点については産総研産業技術総合研究所)が面白いデータを取っています。一般の人にどこの情報を信用するかを訊ねてみると、企業と行政の情報は全然信用されていません。人々が信用しているのは学者・研究者の情報です。また、どこから情報を手に入れるかというと口コミとマスコミが中心になっています。つまり、新聞に載った研究者の言葉がいちばん信用されているということになります。
 研究者の発言というのは、学問的な間違いはなくても、それだけが唯一正しいというわけではないのに、一般の人は確実な情報と受け取るわけです。
 むろん、行政、企業の情報が信用されないのにはそれなりの訳があります。例えば、官庁のホームページなどは一般的に見にくくてなかなか見る気にならないし、企業のほうも水俣病などの昔の問題の影響が依然として尾を引いています。情報をディスクローズしない体質が払拭されているとは言いきれません。人々は、何か本当に大変なことが起こったら隠すに違いないと思っています。
 ですから、企業も行政ももっともっと努力して、信頼される情報を出しつづけていかないと市民の不信感はぬぐえないということを認識しなければならないと思います。私たちも最近は化学物質を分かりやすく説明したパンフレットを作ったりして努力しているつもりですが、まだ十分とはいえません。ホームページも読んでみたいページにしていかなくてはならないと考えています。
 メディアの目を通してではなく直接情報を出すこと、さらに、ただ出せばいいということでなく、皆に読んでもらえる、理解してもらえる、分かりやすい情報を発信することをもっと心がけたいと思っています。

 一般の人がどのような情報を信用しているかについて、産総研の調査結果を引用し説明している。確かに一般の人は、学者・研究者の意見を信じてしまう傾向があると思う。また、学者・研究者の意見が時として一元的な場合が多いことも事実だと思う。
 特に、マスメディアが絡むとこの傾向は一段と強くなる。ある方向性へ視聴者を導こうとする意図が見えるからである。そういう意味で、行政や企業がわかりやすい情報を直接発信するという考え方は正しいと思う。
 ただ、今後一般人とのコミュニケーションが重要視されるようになると行政数や企業数から見て、流す情報が厖大となり、メディアだけでは伝えられない時代がそう遠くない未来に訪れるように感じている。行政や企業は、インターネットで情報を公開していくしかないと思っている。