環境省の環境ホルモン問題に対する考え方

 環境省環境保健部環境安全課長 上家和子氏が、塩化ビニル環境対策協議会のホームページで、化学物質や環境ホルモン問題に関する環境省の考え方を述べている。
http://www.pvc.or.jp/news_ind/56-03.html
 環境ホルモンに関しては、すでにExTEND2005を発表し、SPEED'98の反省点を元に方向性を転換しているが、その反省点を具体的に述べている。

 SPEED'98では、優先的に取り組むべき物質として65物質をリストアップして濃度測定や暴露試験などを行いました。その結果、ノニルフェノールなど4物質について一般環境中に比較的近い濃度で魚類に対する内分泌かく乱作用の可能性が推察されたものの、ラットによる試験の結果からはヒトへの悪影響を推察させるようなものは確認されませんでした。
 我々としては、一般環境中の濃度がどうなっているのか、そしてその濃度で生態系やヒトに何か悪影響があるのかどうかという点が最大の関心事であり、そのために開発中の試験・評価法を順次試行してきたわけですが、リストだけが一人歩きして、まるで「環境ホルモン物質」というものが実在するような騒ぎになってしまいました。試験・評価法の開発研究に着手する基礎になったという点でリストの意味はあったと思いますが、それ以上に、環境ホルモンリストのようなイメージで受け取られてしまったことは情報提供のあり方の観点からは反省すべき点だったと思います。

 リストが一人歩きして、まるで「環境ホルモン物質」というものが実在するような騒ぎになったことを反省している。また、リストは、開発中の試験・評価法の指向するためのリストだったとも述べている。

ExTEND2005では、化学物質の一部に内分泌かく乱作用を有する物質がある、ということであって、内分泌かく乱物質というものが問題なのではない、化学物質の作用の一側面である、ということをはっきりさせるために、まず、タイトルを「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について」とし、また、影響評価を進めるために作られていた「優先的に取り組むべき物質リスト」は廃止し、すべての物質が対象となり得ることを書き込みました。また、SPEED'98に参加した研究者が特定少人数に偏っているという批判に応えて、調査研究に限らず検討の場面についてはすべて公開の場で行っていくこととしました。

 内分泌かく乱作用が、化学物質の作用の一側面であり、内分泌かく乱物質という表現が正しくないことも述べている。また、SPEED'98に参加した研究者が特定少人数に偏っているとの批判があったことを述べ、調査研究、検討の場面をすべて公開の場で行っていくと述べている。
 続いて、内分泌かく乱作用に対して、下記のように述べている。

 内分泌かく乱作用の問題があれだけ怖がられたのは、一般環境中に残留している低濃度の化学物質が生物の内分泌系に作用するという仮説に影響されたためですが、日本の野生生物にそういうことが起こっているかどうかということを調べたデータは殆どないのが実状です。イボニシについてだけは報告がありますが、トリブチルスズについても、メダカとラットの試験では明らかな内分泌かく乱作用は認められませんでした。この結果から、すべての生物に対して影響を与えると言うものではないことが明らかとなっています。

 つまり、内分泌かく乱作用は、すべての生物に対して影響を与えるというものではないことが明らかになったということ。