体への影響を論ずるトリック

 食品や食品成分が体によいだの悪いだのとして取り上げられるとき、どのような経路でそれを摂取するのか、まだどれだけの量を摂取してその影響が見られたのかが無視されることがよくある。無視できるほど、生体と外界からの物質との関係はそれほど単純ではない。
 例えば、注射でなければ効果がないという物質がある。経口的に摂取したのでは壊れたり、吸収されないため。そういう物質を含む食品を食べても効果は期待できない。「食品Aには発ガン性物質が含まれている。Aを食べるとガンになる」という場合も、どれだけの量の発ガン性物質が含まれているのか、日常の食生活で普通に食べる量でも発ガン性の可能性があるのか、が十分に解説されていない例がよくある。
 食品の効能・効果や安全・危険を考えるときには、摂取経路や量の問題がどうなのだろうか、に思いをめぐらせると冷静に対処できる。