*硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素による地下水汚染について
 「平成16年度地下水質測定結果について」(環境省)によると、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は、調査した井戸4,260本中235本(5.5%)で基準値を上回る結果となった。
 同報告書によると、

 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素が一定量以上含まれる水を摂取すると、乳幼児を中心に血液の酸素運搬能力が失われ酸欠になる疾患(メトヘモグロビン血症)を引き起こすことが知られている。硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素による地下水汚染は、施肥、生活排水、家畜排泄物等、汚染原因が多岐にわたり、また、汚染が広範囲に及ぶ場合が多い。
 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は、平成5年に要監視項目※に設定され、その後、平成11年2月に環境基準項目に追加された。平成11年度から水質汚濁防止法に基づく常時監視が行われており、他の項目に比べて高い環境基準超過率を示している。
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素に係る超過井戸数の推移を見ると、概況調査によって毎年200本程度の基準超過井戸が新たに確認されており、翌年度以降の定期モニタリング調査によって継続して監視している超過井戸の数は確実に増加している

とある。(環境省は硝酸性窒素、亜硝酸性窒素を用語として使用しているが、ここでは用語統一のため、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素に変更して引用した。)
 地下水汚染の原因としては、多岐にわたるとされているが、家畜排せつ物、農地からの汚染が主だった原因と見られている。特に、家畜排せつ物に起因する硝酸態窒素は、家畜に使用される飼料のほとんどが輸入であり、家畜排せつ物に含まれる窒素成分は海外から入ってきた新たな養分として地中に蓄積されてゆく。
 「食卓の安全学」(松永和紀著:家の光協会)によると、日本で発生する家畜糞尿は、年間約9,000トン(2,003年度)。5年前の調査では、浄化処理されたりメタン発行発電などに利用されたりしていたのが1割弱、堆肥などとして農地に入れられたのが8割強、残りの1割は不適正処理分で、野積みされたり穴を掘って埋められたりしている。しかし、平成16年11月から家畜排せつ物法が完全施工され、不適正処理分は減少すると見られている。
 同書の中で、松永氏は、

 日本は「飼料輸入」という入り口を開きっぱなしにする一方で、「食糧や飼料の輸出」という出口をほとんど持ちません。ですから、飼料に含まれている養分は国土に溜まっていくしかないのです。
(中略)生態系も農業も養分の微妙なバランスの上に成り立っています。多すぎてもダメなのです。富栄養化は環境汚染にもつながります。
(中略)近年、養分過多によって安全が脅かされ、環境が壊れる兆しが見えてきました。それは、硝酸態窒素の問題です。

と指摘している。
食卓の安全学―「食品報道」のウソを見破る

 食料自給率の記事の中で、食生活の変化による食料自給率低下が問題視されていることを書いたが、ここでも輸入に頼らざる得ない家畜の飼料が家畜糞尿の形を経て、硝酸態窒素問題につながっている。BSE問題や環境ホルモン問題よりも硝酸態窒素問題の方が、ずっと深刻であると思うのだが・・・