先日、会社で顧客向けに出している情報誌に載せる環境関連の連載記事を書いた。ここ2回ほど環境科学という大学の教養学部向けの本を題材に書いている。

ISBN:4807905791

 今回は、第2章の”人間はどこまで長生きしたいか”(蒲生昌志氏著)の紹介を行ったのだが、その中に、平均寿命がなぜ延びているのかの説明があり、こう記載されている。

 近年の日本や欧米における著しい平均寿命の延長は、特に乳幼児の死亡率の改善が寄与しているが、肺炎、結核、赤痢といった感染症が十分コントロールされるようになったことも大きい。また。脳卒中の減少も一役買っている。しばしば、これらの疾病とそれに伴う死亡の減少は、抗生物質などの医薬品の開発や、健康診断の普及のおかげだと思われがちだが、むしろ栄養状態や衛生水準の改善こそが重要であったと考える人も少なくない。

平均寿命の計算の仕方を理解すると、乳幼児の死亡率が平均寿命を大きく延ばす原因であることは、わかる。まして、アフリカなどの小国の平均寿命が極端に短いのは、乳幼児の死亡率が高いのとエイズが大きく影響していると言われている。それに比べ、日本では乳幼児の死亡率もエイズの死亡率もかなり低い。従って、ここに書かれている様に栄養状態や衛生水準の改善が大きく寄与していると思う。

 また、人口動態統計の主要な死因による死亡率の経年変化のグラフに関して、こう記載されている。

 特に悪性新生物(いわゆるがん)の増加がきになるが、そのような増加をもたらすリスク因子とはいったい何だろうか?実は、有害化学物質の増加のせいでもなく、ライフスタイルの悪化のせいでもない。あえて言えば”高齢化”のせいである。平均寿命が延びるとともに、当然高齢者の数(人口に占める割合も)が増える。その結果、高齢者に起こりやすい疾患が見かけ上増加するのである。(中略)さまざまな死因をコントロールして長生きできるようになったため、結果として、皆が恐れるがんで死ぬ人が増えているという皮肉な状況なのである。

つまり、高齢化が4大成人病増加の原因であると述べている。現在の死亡率の経年変化を1985年の人口比率に併せてみると4大成人病による死亡は、減少あるいは横ばい状態だそうだ。経年変化のグラフだけをそのまま見ると極端に4大成人病が伸びているように見える。ところが、グラフに出てこない隠れた要因が含まれていることがある。隠れた要因に気づくには色々な方面から常に考察している必要があり、一般の我々ではなかなか気づかないのではないだろうか。

 私が、大学生だった頃(約20年前)、大学で環境に関する授業は無かったと思う。本来、人間が暮らしていく上で、冷静な判断が求められる分野を大学の教養学部や高校などでやることは非常に良いことだと思う。我々の年代の社会人は、こうゆうものを学んだ人間が社会に出てくることを認識しておく必要があると思う。