<span style="font-weight:bold;">生物多様性とは</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 「生物多様性」とは、文字どおり地球上に存在する生命の多様さをいい、自然環境の豊かさを表しています。
 現在、少なくとも1,000万種以上とされる膨大な生物の種は、太古、海中に誕生した1つの生命が長い時間をかけてさまざまに進化してきたかけがえのない生命です。これら多様な生物の活動が、生態系をつくりだしています。
 生物多様性は、この膨大な「種の多様性」だけでなく、同じ種であっても異なる個性を生む「遺伝子の多様性」、さまざまな生物がかかわる「生態系の多様性」について考えることが重要です。
 遺伝子の多様性は、病気や環境の変化に対し異なった抵抗性を示し、種の絶滅を防ぐことにもつながっており、いま、地域的な遺伝子の存続が強く求められています。
 生物の多様性は、生態系の健全性を支え、豊かな生態系サービスを持続させていく基盤となり、私たち人間にとってその保全は大切です。

 最近は、医薬品の原料、農作物の改良など資源保護の面からも遺伝子や種の保全が注目されており、この人類の共通財産の利用について国際社会で多くの議論が始まっています。p.72

 生物多様性には、「種の多様性」、「遺伝子の多様性」、そして「生態系の多様性」があることを覚えておきましょう。特に、種の多様性と遺伝子の多様性の違いを理解しましょう。
 生物は、太古に海中で誕生した1つの生命が長い時間をかけてさまざまに進化し、1,000万種以上とされる種類にわかれてきました。これが、生物の種です。
 従って、種の多様性は、この1,000万種以上の数に及びます。
 さらに、同じ種でも遺伝子は皆違っています。同じ日本人でも遺伝子は異なっています。たとえ親子といえども完全に同じではありません。これが、遺伝子の多様性です。
 生態系は、一種の生物社会を意味し、「食べるー食べられる」の関係のように、物やエネルギーが循環する閉じたシステムです(p.34参照)。この生態系にも多様性があります。

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<span style="font-weight:bold;">かつてないスピードで生物種の絶滅がおこっている</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 約175万種の野生生物種が確認されていますが、実際に存在する種の数はまだよくわかっておらず、1,000〜3,000万種ともいわれ、最大で1億種以上との推計もあります。
 現在、この多様な生物種の絶滅が、かつてないスピードで進行しています。「ミレニアム生態系評価」によれば、最近100年間の生物種の絶滅速度は、化石記録などから算出された過去の絶滅速度の最大1,000倍を越えると指摘しています。また、これを放置すれば、近い将来、現在の10倍の絶滅速度になって生態系を劣化させ、生態系サービスの低下を招き、現在だけでなく将来世代が得るべき利益を大幅に減少させるおそれがあると警告しています。p.72-73

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<span style="font-weight:bold;">野生生物種減少の現状</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 国際自然保護連合レッドリスト(2004年)によれば、世界で15,600種が絶滅危惧種とされ、未確認の生物まで含めればこの数倍にも達すると指摘しています。
 特に深刻なのが、熱帯雨林の開発・減少による絶滅の進行です。熱帯雨林は、陸地面積のわずか約6%ですが、地球上の生物種の半分以上が生息するといわれています。ここでは毎年、わが国の4割にも相当する面積の森林が失われており、今後25年間に約4〜8%の生物が絶滅するという試算もあります。
 わが国では、2007年時点で3,100種を越す生物がレッドデータブック環境省)に掲載され、絶滅が危惧されています。近年、トキやコウノトリの野生復帰が話題になっていますが、里地里山の農村環境が大きく変化し、多くの生物が急速に数を減らしています。メダカやキキョウなど、かつて身近にいた生物も絶滅危惧種に指定され、その生息環境とともに早急な保護・保全が必要となっています。
 また、生息場所の移動が困難な多くの生物にとって、地球温暖化による急速な環境変化は深刻な問題です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2007年に発表した第4次評価報告書は、地球の平均気温が1.5〜2.5℃上昇した場合、生物種の20〜30%について絶滅の危険が高まると警告しています。地球温暖化の防止は、生物多様性保全にも重要な課題なのです。p.73

 レッドリストレッドデータブックは、絶滅のおそれのある野生生物のリストです。レッドリストは種名や絶滅の危険度などを記載するだけに対して、レッドデータブックはその生物の生活史や分布などより詳細なデータが掲載されています。

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<span style="font-weight:bold;">生息環境の劣化</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 地球規模で現在進みつつある野生生物の減少は、前述のように大規模な開発・森林伐採による生息地の破壊、地球温暖化や化学物質などによる環境汚染など生息環境の劣化が原因と考えられ、さまざまな人間活動が直接・間接に影響しています。また、象牙や毛皮の採取あるいはペットなど、密猟によって多くの野生生物が絶滅の危機にあり、「種の宝庫」ともいわれる熱帯林では非伝統的な焼畑耕作、過剰放牧、商業的伐採、森林火災なども進んでいます。
 このような野生生物種減少の背景には、途上国などの貧困や急激な人口増加、より豊かな生活の追求など、社会的、経済的な問題が横たわっていることを忘れてはなりません。p.74

 化石燃料を使い始めた人類は、その移動速度をはやめ、より遠くに、短時間で移動できるようになりました。その結果、化石燃料を使用する前に比べ、人間活動にともなう影響がより広範囲に、速度をあげて広がっているのです。生物種の絶滅速度を上げているのもこの影響にほかなりません。
 また、生物種が熱帯雨林などの森林に集中していることも速度を速める原因となっています。

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<span style="font-weight:bold;">外来種の進入</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 外来種の進入も、従来の野生生物に大きな影響を与えています。天敵がいない、在来生物が身を守る方策を知らない、大型で競争に強いといった外来種の進入で、それまでの食物連鎖のバランスが大きく損なわれています。国内では、沖縄のマングースによるヤンバルクイナの捕食、ブラックバスによる在来魚の減少など、在来生物の生息、生態系の保全に深刻な影響が生じています。
 外来種のもう1つの問題は、在来種との交雑による遺伝子の攪乱です。カブトムシやクワガタなど多くの昆虫でもこの問題が生じており、長い時間をかけて形成されてきた遺伝子が失われる危険があります。
 外来種問題は、これまで貿易や国際交流の活発化で人や物に付着した進入が原因となってきましたが、最近ではペット生物の安易な管理、放置が問題を拡大させています。
p.74

 こちらは、どちらかというと国内の生物種の多様性に係わってきます。もともと、島国の日本で大敵のいなかった種が残っていたところに、大陸などのタフな環境で進化してきた外来種が人間活動の広がりにともなって移動し、その日本の生態系を乱しています。これも、人間や物の移動にともなって発生しています。

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<span style="font-weight:bold;">野生生物種減少の影響</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 わたしたちの生命や生活は、繰り返し述べたように生態系の恵み、「生態系サービス」を基盤としています。生物種の絶滅が生態系に及ぼす影響については、科学的にまだ明らかになっていない部分もありますが、生物多様性によって支えられている生態系が衰退し、生態系サービスの低下など今後の人間活動に取り返しのつかない問題を生じさせていくおそれがあります。
 また、現在、難病の特効薬をはじめ、世界で処方されている医薬品の約40%が自然界から得られた原料を使用するなど、生物多様性から直接得られる恵みは人類にとって貴重な財産となっており、種の絶滅は大きな驚異です。
 生物多様性問題を考えるうえでは、一度絶滅した生物種、崩壊した生態系は人間の力では再生は不可能であるとの認識にたって行動していくことが大切です。p.75

 我々人間は、いろいろな面で生物の多様性による恩恵を受けています。それを生態系サービスといっています。医薬品の約40%が自然界から得られた原料に依存している例が典型例です。

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<span style="font-weight:bold;">生物多様性保全の取り組み 生物多様性条約</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 人間活動の拡大によって、多くの野生生物が絶滅の危機にさらされています。近年、野生生物の種の絶滅は、年間4万種にも及んでいるとの推測もあります。この大量絶滅が人類生存の基盤である生態系を衰弱させ、生態系サービスの劣化を通じてわたしたちの暮らしや活動に大きな悪影響を及ぼすことが懸念されています。そこで、1992年、ブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットにおいて、野生生物の保全に取り組んでいくため、「生物多様性条約」が調印されました。
 条約は、(1)地球上の多様な生物とその生息環境の保全、(2)生物資源の持続可能な利用、(3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を目的として、先進国による途上国の取り組みへの支援、情報交換や調査研究への各国間の協力、また各加盟国による生物多様性の保全のための「国家戦略」の策定、実行などを定めています。
 条約には、2008年10月現在、日本を含む191の国・地域が加盟し、概ね2年に1回、条約の実施に関する協議や意志決定を行うための締約国会議(COP)が開催されることになっています。
 2010年の第10回締約国会議(COP10)は名古屋市での開催が決まり、2002年のハーグCOP6で採択された「生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる(2010年目標)」に代わる新たな条約戦略計画の策定、遺伝資源の取得と利用に係わる新たな国際的枠組みづくりなどの検討が行われることになっています。p.75

 1992年に開催されたブラジル・リオデジャネイロでの地球サミットは、この公式テキストでも何度も顔を出します。年号と場所と名前は覚えるようにしてください。詳細は、後述します。
 さて、最後の方に今年名古屋でこの秋、第10回締約国会議(COP10)が行われることが記載されています。締約国とは、生物多様性条約に加盟している国々で行う会議です。
 生物種の多様性に関する国際会議が日本で開催される年のため、この生物種の多様性は、出題される可能性が非常に高いです。
 他の重要な項目とあわせて、何度も、テキストを読みなおしましょう。

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