遺伝の暗号文(染色体)

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。

 「四次元的な型」というのは、卵細胞が受精してから、成熟して生殖を行いはじめる成熟期に至るまでの個体発生の全期間に関するものを意味する。
 この四次元型の全体は、受精卵なるただ一個の細胞の構造によって定められることが知られている。しかも、それを本質的に定めるは、受精卵細胞のほんの一小部分(細胞の核)の構造であることがわかっている。
 この核は、その細胞の正常の「休止状態」においては、細胞の中の一部に拡がっている染色質の網目として見えるのが普通だ。しかし、真に重要な細胞分裂の行われている期間には、一組の粒子からできているように見える。
 この粒子は、普通ひも状または棒状の形をしており、染色体と呼ばれ、数はたとえば8本とか12本とかで、人間の場合、48本である。この染色体は、2×4、2×6、というように全体が二組になっている。一組は母(卵細胞)からきたもので、もう一組は父(受精させる精子)からきたもの。これらの染色体の中に、その個体の将来の発展と成熟したときの体の働きの型(パターン)の全部が、一種の暗号文の形で含まれている。
 染色体の構造は、それがあらかじめ定めている成長発育を実際に起こす道具の役割をも果たす。建築設計図と大工の腕とを一緒にしたものに例えられる。

 Wikipediaによると、染色体は、DNAとヒストンでできている。DNAは酸性であるが、ヒストンが塩基性タンパク質のため、染色体全体では中和されて安定だという。染色体は、全体が対になっていて、片方は父親から、もう片方は母親から受け継がれる。この染色体の中にあらかじめ定められている成長発育の情報が記憶されている。今日では、DNAのみで全てが行われるのではないことがわかっている。1940年当時は、DNAそのものがその道具としての役割もはたすと考えられていたのだろう。

 前回までのE.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約

自民惨敗37議席、民主躍進60議席・参院選全議席確定

 29日投票が行われた参議院選挙は、自民の惨敗、民主の躍進で幕を下ろした。各新聞社の社説は、この結果を踏まえたものとなっている。
 日経産業新聞読売新聞は、安倍首相続投に関して、肯定的な書き方をしている。ただ、日経と読売では若干ニュアンスが違っており、日経が経済重視の考え方なのに対して、読売は自民支持の立場が目立つように思われる。また、朝日新聞毎日新聞は、安倍内閣続投にノーを打ち出している。こちらも、安倍内閣にノーであるが、民主の応援団という雰囲気はない。何れの新聞も政治の混迷が起こらないように期待するといったコメントが目立つ。
 今回の選挙で驚いたのは、一任区での民主の躍進である。新聞を読んでいると民主の戦略が的中したようではあるが、農家が自民党にノーを言ったというのはよほどのことだったのだろう。その理由が年金なのか、農業政策なのか、現時点では見えていない。
 ある自民の国会議員が、「松岡農相の自殺のあとの選挙で、美しい日本と言えといわれてもねえ・・・」といっていたが、確かに美しいとは言い難い状況であったのではないだろうか。安倍首相のリーダーシップ力に期待が持てないことを、この半年間でいやというほど見せられてきたことに国民がノーを突きつけたというかたちであろうか。
 それともう一つ目立つのが、組織票の効力が落ちていることだろう。公明党や共産党がふるわなかったのはこのせいだと思う。浮動票重視の傾向は今後加速していくように思われる。