財政の罠

 ジェフリー・サックス著「貧困の終焉―2025年までに世界を変える」から引用。

 個人の経済状態が悪化していなくても、政府の財源が乏しいために、経済発展の基盤となるインフラストラクチャーが整備できない場合もある。たとえば国民健康保険や道路建設、電線の敷設、港湾整備のような公共財や公共サービスへの投資において政府の存在は大きい。だが、政府がこれらの公共財に投資する財源をもたない場合もあり、それには少なくとも三つの例が考えられる。その一、国民全体が貧しく、税収が不足している。その二、政府の対応が不適切か、腐敗しているか、あるいは無能なため、税が集められない。その三、政府がすでに多額の債務を負っていて(昔の借金が先送りにされている場合など)限られた税収のすべてを負債の返済に回さなければならず、新たな投資をするゆとりがない。この三番目の例は、デット・オーバーハングと呼ばれる。過去から引きずった大きな負債は、将来の成長に対する希望を打ち砕く。そんな状況におかれた国が改めて経済発展の道へのスタートを切るには、負債の帳消しだけが解決策になるかもしれない。

 国という単位も個人や企業と変わらないということだ。財政の罠は個人でも起こりうるし、企業でもおこる。