賢い集団の四つの要件

「みんなの意見」は案外正しい ジェームズ・スロウィッキー著(角川書店)から

 この日、市場が賢い判断を下せたのは、賢い集団の特徴である四つの要件が満たされたからだ。意見の多様性(それが既知の事実のかなり突拍子もない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)、独立性(他者の考え方に左右されない)、分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)、集約性(個々人の判断を集計して集団として一つの判断に集約するメカニズムの存在)という四つだ。
 この四つの要件を満たした集団は、正確な判断が下しやすい。なぜか。多様で、自立した個人から構成される、ある程度の規模の集団に予測や推測をしてもらう。その集団の回答を均すと一人ひとりの個人が回答を出す過程で犯した間違いが相殺される。言ってみれば、個人の回答には情報と間違いという二つの要素がある。算数のようなもので、間違いを引き算したら情報が残るというわけだ。

 藤原正彦氏は、「国家の品格」の中でこう述べています。

 もちろん国民が時代とともに成熟していくのなら問題ありません。昔の話は単なるエピソードとして片付けることができます。しかし、冷徹なる事実を言ってしまうと、「国民は永遠に成熟しない」のです。
 このような事実をきちんと伝えないといけません。過去はもちろん、現在においても未来においても、国民は常に世界中で未熟である。したがって、「成熟した判断が出来る国民」という民主主義の暗黙の前提は、永遠に成り立たない。民主主義にはどうしても大きな修正を加える必要があります。

 そして、「真のエリート」が必要と述べている。しかし、ジェームズ・スロウィッキー氏は、エリートを作らなくても、四つの要件を満たした集団であれば、正しい判断を導きやすいと言っている。この論理展開を使用したのが、グーグルの検索エンジンであると述べている。また、チャレンジャー爆発事故の際に、チャレンジャー製造に関連していた四つの企業に対し、原因が分からない時点で、適切な市場判断をしたことを例にあげている。ジェームズ・スロウィッキー氏の上記の本は、まだ全部読んでないので、何ともいえないが、国民の意見もこの四つの要件を満たした形で判断されれば案外正しい方向に向くのかも知れない。

準備書面(3)の原告側の意見

へたれドクターの突撃日記で、第六回口頭弁論で提出された原告側の準備書面からの引用と意見が述べられている。引用部分は、下記のとおり。

 こうした状況下にあって、「環境ホルモン問題は大した問題ではない」という意見から、「未解明なことは数多くあるが、人間や野生生物にとって看過できない重大な課題である」という意見まで、専門家の間でも大きく意見が対立している。前者の意見は、産業界の研究者や、被告のような環境ホルモン研究の専門家ではない学者・ジャーナリストが主張していることが多く、原告をはじめ環境ホルモン研究者の多くは、むしろ後者の立場に立っている。

 この部分の意見は、へたれドクターさんと同意見なので省略する。この部分でわからないのは、どうしてこういう対立軸を作ろうとしているのかである。一つは、「環境ホルモン問題は大した問題ではない」という意見は、SPEED'98の結果報告を聞いた多くの人の意見だと思う。決して産業の研究者や、環境ホルモン研究の専門家でない学者やジャーナリストだけの意見ではない。また、環境ホルモン研究を行っていた人の中にもそう感じた人がいると思う。それでないとSPEED'98の結果は、ああならない。
 原告側は無理に対立軸を作って自分たちの置かれている立場を説明しようとしているが、そもそもこういう対立軸は存在していないし、原告側のやっかみに近い感情だと思う。