科学

古典物理学者の予想は、決して詰まらぬものとは言い捨てられないが、誤っている

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 生物、および生物が営む生物学的な意味合いをもつあらゆる過程はきわめて「多くの原子からなる」構造をもっていなければならない。そして、偶然的な「一原子によ…

分子数の平方根の法則([tex:\sqrt{n}]の法則)

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 いまある気体が、ある温度と圧力の条件下である密度をもっているとする。これを私が、ある容器の中に、この条件の下で気体分子がちょうどn個含まれている、という…

測定の精度の限界

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 一つの軽い物体を一本の細くて長い繊維で吊して、釣り合いの位置に保たせたものを、物理学者は弱い力を測定するのによく使う。これは「ねじり秤」といって、ごく…

第二の例(ブラウン運動、拡散)

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 いま仮に、閉じたガラスの容器に微小な液滴から成る霧をみたしたとすると、やがて霧の上側の境界が一定の速度でだんだん下へ下がってくることがわかる。その速度…

法則の精度は、多数の原子の参与していることがもとになっている

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 細長い石英の管に酸素ガスをみたして、それを磁場の中に入れると、ガスが磁化される。この磁化は、酸素の分子が小さな磁石であって羅針盤の針のように磁場の方向…

物理法則は原子に関する統計に基づくものであり、近似的なものにすぎない

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 原子はすべて、耐えずまったく無秩序な熱運動をしている。この運動が原子自身が秩序正しく整然と行動することを妨げ、少数個の原子間に起こる事象が何らかの判然…

生物体の働きには正確な物理法則が要る

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。 脳およびそれに付随した感官系のような器官は、それに物理的な変化が行われる状態が、高度に発達した思考と密接に対応するためには、なぜ必ず莫大な数の原子から…

原子はなぜそんなに小さいのか?

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約 原子というものは実際まったく小さなもの。われわれが日常生活で取り扱うものは、どんな一片の物質でも、とほうもなく多数の原子を含んでいる。 ケルヴィン卿の使っ…

統計物理学からみて、生物と無生物とは構造が根本的に異なっている

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約 今日では、生物学者たち、それも主に遺伝学者たちの、過去3、40年間の巧妙な研究のおかげで、生物体の内部で時間的・空間的に起こっていることを今日の物理学と化学…

E.シュレーディンガー著「[asin:4004160804:title]

」のまえがき 今回から、E.シュレーディンガーの「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」の要約を記録していくつもりだが、それにあたり、まえがきのみ前文を引用する。この本が書かれたのは、1940年代だが、すでにこの頃でも、今日、科学の…

ゴットフリート・ヴィルヘルム・フォン・ライプニッツ(2)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 ライプニッツは1675年頃初めて彼の微分法と積分法を思いつき、1677年までには十分発展した、実用的な体系を有していた。彼のやり方はニュートンとはその出発点から異なっていた。すでに見たように、ニュート…

ゴットフリート・ヴィルヘルム・フォン・ライプニッツ(1)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 ニュートンとライプニッツは一緒にして微積分学の共同発明者といわれるのが常である。しかし、二人は性格的にはほとんど似たところがなかった。ゴットフリート・ヴィルヘルム・フォン・ライプニッツ男爵は164…

アイザック・ニュートン(8)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 微積分の発明は、2000年前にユークリッドが「幾何学原論」の中で古典幾何学の主要部分を編簿して以来の、数学における唯一最重大の出来事であった。これが数学者の考え方、研究の方法を永久に変えることにな…

アイザック・ニュートン(7)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 次に、ニュートンは接線問題の逆を考えた:流率が与えられたとき流れを求める問題。一般的にいって、これはもっと難しい問題である(割り算が掛け算よりもむずかしく、平方根を求める方が2乗するよりむずかし…

アイザック・ニュートン(6)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 ニュートンの出発点は、互いに関係し合う二つの変数を方程式によって考えることであった。例えば(今日、このような関係を関数と呼び、がの関数であることを示すためにと書く)。そのような関係は、平面のグ…

アイザック・ニュートン(5)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 対数級数の発見者が誰かについての混乱は、微積分法の発明直前の時代をよく表している。当時は多くの数学者が独立に同じような着想をもって研究をし、同じ結果に到達していた。その発見の多くが本や雑誌に公…

アイザック・ニュートン(4)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 さて、ニュートンはいろいろな曲線の方程式を変数の無限級数として表すのに2項定理を用いた。からはこれらの級数を単に多項式とみなし、普通の代数の法則に従ってそれを扱った。級数の各項にフェルマーの公…

エルヴィン・シュレーディンガー著「生命とは何か」(岩波新書)

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」の中で、著者ワトソンが、エルヴィン・シュレーディンガー著「生命とは何か」がきっかけで、生物学の世界に入ったという記述があっ…

アイザック・ニュートン(3)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 に対して、パスカルの三角形の係数はである(アイザック・ニュートン(2)参照)。(式をの累乗に展開するときこれらの係数を使うと、 が得られる。ところでこれは初項が1で公比がの無限等比級数に過ぎない…

アイザック・ニュートン(2)

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 の展開式は、無限に多くの項を含む;すなわち無限級数となる。これを見るため、パスカルの三角形を前とはちょっと違う形で書いてみよう。 n=0: 1 0 0 0 0 0 0 n=1: 1 1 0 0 0 0 0 n=2: 1 2 1 0 0 0 0 n=3: 1 …

アイザック・ニュートン

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 アイザック・ニュートンはガリレオが死んだ年、1642年、のキリスト降誕祭の日(ユリウス暦による)にイギリス、リンカーンシャーのウィルスソープで生まれた。この一致には象徴的意味がある。なぜなら、ガリ…

ルネ・デカルト

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 17世紀の始めの頃、何人かの数学者が独立にこの問題を解こうと企てた。その中で有名なのがピエール・ド・フェルマー(1601-1665)とルネ・デカルト(1596-1650)である。この二人とブレース・パスカル(1623-…

川口市立科学館

先週の金曜日、埼玉県産業技術総合センターの研究発表会を聞きに行ったついでに、併設されている川口市立科学館を見学した。入場料は、大人200円、小中学生100円と格安の割には大人でも遊べる体験型装置がいくつも置いてあり、なおかつ説明員の方がやさしく…

不定形

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 無限大の記号を普通の数として使うことはできない。例えば、式でとするととなる。の積はやあはりで、にある数を足してもやはり、したがってとなる。が普通の数なら普通の算術法則に従って、この式は単純に1…

極限を持つもの持たないもの

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 数列について極限操作がどのような結果を生むかは具体的に予想できる。しかし、極限値がいくつか、あるいは極限値が存在するかどうかすらすぐに分からないことが多い。例えば、数列(に対して)はのとき極限…

極限値

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。複利計算の総額を表す式が が無限大に近づくとき数列が極限値に近づくということは、が大きくなるにつれて数列の項が限りなくに近づくことを意味している。別の言い方をすれば、数列の十分遠くまでいく(すな…

複利計算からeへ

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。複利計算の総額を表す式がであることを昨日引用した。今日はその続きである。 1年に1度でなく数回利子加算をする銀行もある。例えば、年利5パーセントで半年ごとの複利のときには、銀行は年利の半分を期間…

複利計算と単利計算

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 年5パーセントの複利が付く口座に100ドル(元本)を預けることにしよう。1年後の残高はドルとなる。銀行はこの新しい額を、同じ利率でたった今預けられた新しい元本と考えるであろう。2年目の終わりに…

連続値域への拡張

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。昨日のつづきです。昨日の記事はこちら。 彼(ネーピア)の考えの道筋は次のようであった:任意の正の数を、ある与えられた数(後に底と呼ばれることになる)の累乗として書くことができるなら、数の掛け算、…

等比数列と等差数列

E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。 例えば、数列1,2,4,8,18,・・・は公比2の等比数列である。公比をqと書き、1から始めれば、数列の各項は等々(第n項は)となる。ネーピアの時代のはるか以前から、等比数列の各項と対応する公比の指数との間…